ピアサポートの実際
相談者の安全と専心のために、ピアサポーターは時や場所、振る舞いに気を配る必要があります。「今は相手と自分にとってふさわしい時間か?ここは話を聞くのにふさわしい場所か?他人の目や耳の影響は?相手と自分が座る位置や距離は適切か?」などです。
ピアサポーターの実際の振る舞いには人によって色々な整理の仕方があると思いますが、ストレスマネジメントの行動原理に基づいた〈7つの行動〉をまとめました。ピアサポーターは相談者自身がその〈7つの行動〉ができるようになるように働きかけていく、そのようなイメージです。
〈7つの行動〉=「ゴジラはリスさ」
覚えやすいように頭文字をとりました。
ゴ:合理的に考える
ジ:自分のことは自分でする
ラ:ライフスタイルを改善する
は:発散・表現・楽しむ
リ:リラックスする
ス:スキルを磨く
さ:サポートを動員し、活用する
ゴ:合理的に考える
「ものは考えよう」などとよく言いますが「どう考えるか」によて辛さが増したり、軽くなったりするものです。理にかなった無理のない考え方をするために4点お勧めします。
①自分が辛くなるような極端な考えや偏った考えを緩める(一目盛り言葉弛緩法)
②自分や周囲の人たちを苦しめる「ねばネバ」思考(〜せねばというような)を緩める(ねばネバ希釈法)
③分別する(仕分け思考法)
④現実に即して考える(現実的思考採点法)
ジ:自分のことは自分でする
辛い現実が迫り「どうしよう」と思った時「こうしよう」が見つかることでストレスは縮小し「そうしよう」と実行して少しずつでも成果が得られた時、自信と学びになります。
とかく親切な人がピアサポーターになると(もともと親切だからピアサポーターになるのでしょうが)手続きやら具体的な作業などあれもこれも「代わりにやってあげたい」と言う気持ちが発生しがちです。そんな時は「ちょっとタイム!」自問自答してください。「これは誰のこと?」
ラ:ライフスタイルを改善する
健康を回復するためのライフスタイルの基本は、良質な睡眠と栄養です。悩みが濃いと「眠れない」「食欲がない」ということがしばしば生じます。ここでピアサポーターが「ちゃんと眠らなくちゃだめよ」などとお説教をしても効果は期待できません。
「無理に眠ろうとしなくていい」「無理に食べようとしなくていい」という現実肯定をベースにすることで相談者の「コンフォートゾーン」を守ることが第一です。
は:発散・表現・楽しむ
「語りの傾聴」はピアサポーターの最も大切なスキルといえます。相談者が気が済むまで発散できたり、ありのままを表現できるためにピアサポーターの環境づくりと聴き方が大切です。相談者が安全を感じ、「発散しても大丈夫」「表現が受容されている」と思えるような環境とはどのような環境でしょうか。ピアサポーターの役割が大きく期待されます。
リ:リラックスする
先ずはピアサポーター自身がリラックスします。その次に相談者にリラックスしてもらうことが大切です。そのためのリラクゼーション法もあります(ガイドブックやDVDでご紹介しています)。リラックスすることの効果は心身ともに様々あります。また、落ち着いたり、ゆとりを回復できるので冷静な判断や柔軟の物の見方ができるようになります。
ス:スキルを磨く
ストレス対処に有効なスキルは「コミュニケーションスキル」を始め、「意思決定スキル」「問題解決スキル」「共感するスキル」などいくつかあります。世界保健機構(WHO)は「ライフスキル」という概念を提唱しています。実際のピアサポートの場面では、ピアサポーターは自分自身がこれらのスキルを駆使し、相談者自身もこれらのスキルを使えるように導くことになります。
さ:サポートを動員し、活用する
絆という言葉がどのように使われているかを振り返れば、それが健康や安寧にとって効果がありそうだと予想が立ちます。「ひとりじゃないって素敵なこと」なのです。ソーシャルサポートの定義は様々です。ピアサポーターとして相談者をサポートするときそれらの材料から適宜拾い上げ、自分流を作り上げていただきたいと思います。そしてピアサポーターの意図や意欲はもちろん大切ですが、それがサポートになるかどうかは相談者にどう受け取られるか次第で決まるということを肝に命じておいて欲しいのです。