小児がんの治療

抗がん剤による治療

抗がん剤による治療を“化学療法”と呼びます。抗がん剤といっても色々な種類があります。一般的な薬として用いられることもあるものから、それこそ毒物として指定されているものまで様々です。
抗がん剤は悪い細胞もやっつけますが、その反面良い細胞にも傷をつけてしまうことが多くあります。副作用としては、正常の血液が一時的に作れなくなって、好中球減少、貧血や血小板減少といった症状がでます。それ以外にもそれぞれの抗がん剤に特有な症状があります。

手術による治療

小児がんのなかでも固形がんの場合、最初にできた腫瘍を“原発巣(げんぱつそう)”と呼び、そこから転移して腫瘍が広がったものを“転移巣(てんいそう)”と呼びます。固形がんではその腫瘍ができる場所によって、手術が必要となる場合が多くあります。ただし、一般的に腫瘍が全身に広がっている場合は原発巣のみを手術することはありません。
小児がんでは腫瘍の一部を手術で取ってきてさまざまな検査に提出する“生検”が一般的に行われています。ただし腫瘍のできた場所によっては、生検の手術をすることがとても危険な場合があります。そのときには血液検査や画像検査から腫瘍の性質を想像して、薬剤による化学療法を優先させることもあります。
固形がんの場合は抗がん剤による治療、手術による治療を併用し、時間、容量、組み合わせを総合的に判断することが重要になるため、治療に関わる診療科は小児科だけではなく、小児外科、放射線科などがチームとなって診療に関わります。

放射線による治療

固形腫瘍の治療において、放射線治療は重要な位置を占めており、脳腫瘍や横紋筋肉腫、神経芽腫などで効果があります。かつて白血病治療では、中枢神経への再発を防ぐ目的で放射線治療が行われていましたが、現在では中枢神経浸潤がある場合に限られています。また、造血細胞移植の前処置として全身放射線照射が用いられることがあります。
放射線治療の方法にはさまざまな方法があります。二方向から放射線照射を行う方法からさまざまな方向から腫瘍を狙い撃つ定位放射線治療という方法もあり、高い線量の放射線治療を行うことができます。

造血幹細胞移植

造血幹細胞というのは、血液を作る種のような細胞で、主に骨髄という血液を作る工場の中にいます。この血液の種から赤血球や白血球、血小板といった血液の成分が作られます。造血幹細胞移植というのは、骨髄という畑に他人(または保存しておいた自分)の血液のタネを植えることです。種まきをするためには、きちんと骨髄という畑を耕さないといけません。耕す方法として大量の抗がん剤や放射線を用いることがあります。その後しばらく無菌室で過ごすことになりますが植えた種から芽が出ないときにはその状態を「拒絶」とよび、逆についた花(=血液)がからどぉ攻撃するようなときにはGVHD(移植片退縮種苗)が起こることがあります。こういった免疫反応を抑えるために、免疫抑制剤を使用します。

小児がんと成人のがんの治療経過のちがい

小児がんと成人のがんは、発症の機序や性質が異なります。そのため化学療法による有効性も異なります。
小児がんは、がん細胞自身が抗がん剤に反応しやすく、有効な薬剤が多いのが特徴といえます。そのため発症していたときにはほぼ全身に転移していたにもかかわらず、抗がん剤によって半減することも多いのです。

小児がんのフォローアップ

これから、20代の700人に1人が小児がん経験者となると言われています。これはどういうことでしょうか。
現在の医療の進歩により、小児がんを克服した、もしくは小児がんと今も共存しながら生活をしている子供達が大変増えています。しかし小児がんであったことを全く忘れて生活できるかといえば、そうではありません。
小児がんの場合、最も大切なのは長期フォローアップということが言えるでしょう。
2012年に全国がん登録は法制化され、2016年から開始されました。これは地域がん登録を発展させたもので、国内で発症した「がん」を大人子どもに限らず集めるものです。これはこれから小児がんで治療する子供達の貴重な情報の一つとなり長期フォローアップに結びつくものと期待されています。