小児がん患者のための看護知識

小児がんと診断されると、長期にわたり治療が必要となります。そのため長期の入院生活の中で家族ははじめて病気のことや治療中の生活に関連した知識を学ばなくてはなりません。また、自宅での生活を送るための技術も身につけていかなくてはなりません。

症状に対する手当の方法

痛み…小児がんの子どもは、腫瘍の増大による「がんそのものによる直接的な痛み」、手術や骨髄穿刺、採血など「処置による痛み」、副作用などによる「慢性的な痛み」、そして「心理・社会的な心の痛み」というような大きな苦痛を感じています。親は子どもの苦痛を見るととても動揺します。でもそこで冷静に「痛みの意味・程度を確認」できれば「痛みのコントロール」につながる適切な対応ができます。

感染…抗がん剤の治療は骨髄の働きを抑制して正常な血液の製造を低下させます。そのため白血球中にある好中球が現象し感染症を起こしやすくします。感染を起こすと体力を消耗し苦痛をともない、重篤になれば生命に危険を及ぼします。したがって感染予防は早めに対処しましょう。感染を引き起こさないようにするためには日頃から「身体の清潔」「環境の清潔」「食事の注意」などが重要です。

口内炎…抗がん剤の治療や放射線の治療は、体の中でも柔らかい部分(粘膜)に障害を多く生じさせます。その中で最も多いのが口内炎です。小児がんで発生した口内炎は、経験したことも見たこともないような大きさ、痛み、外観になります。そのため「口腔内の清潔を保ち、感染を予防する」「口腔内の感想を予防する」ことが大切です。

吐き気・食欲不振・味覚異常…小児がんの子どもは治療に伴う吐き気の他に、病気そのものからくる吐き気、心の影響からくる吐き気がありその原因はさまざまです。今までの治療や処置に伴う恐怖、不安などがフラッシュバックされて心理的に吐き気をもよおすこともあります。
この吐き気が繰り返されることによって、脱水や電解質バランスに異常が起きて栄養状態の低下を引き起こす危険があります。成長期の子供たちには大変悪い影響になりますので「状況を把握」し「環境を整える」。「食事の工夫」や「気分転換」をはかりましょう。
また、化学療法を受けたり骨髄移植の終了後には慢性的な食欲不振や、味覚異常が起きます。それが食欲不振につながり栄養状態の低下を引き起こすこともありますので食べて可能な食べ物、本人の好みなど食事を工夫していきましょう。

下痢・便秘…下痢の原因は、抗がん剤の副作用による腸管粘膜の変化や、放射線療法の副作用による感染、骨盤、腹腔への影響によるものとさまざまあります。また便秘の原因には、脱水、過度の緊張、運動不足、食事・水分量摂取の低下などがあります。下痢や便秘は栄養や生活そのものにも大きな影響を及ぼすため、体力の維持、免疫力の増進には、排泄のコントロールが重要です。

倦怠感(だるさ)…倦怠感は治療を行なっている子供の多くが体験しています。しかし主観的な症状であるため周りが理解しづらく誤解を生じることもあります。環境にも留意しながら日常生活のリズムをつけ、活動と休息をバランスよく取り入れていきましょう。もちろん気分転換も大切です。

外来通院をするときの知識

小児がんの治療終了者数は、医療の進歩にともなって上昇しています。しかし成長途上にある子供に対する小児がん治療の影響は行基にわたり問題を生じさせることがあります。外来治療を含め定期的に病院へ通院することが大切です。

外来診療を受けるときの知識…外来は、化学療法を受けるための通院と、治療に伴う晩期合併症のフォロー、治療が終了した後受ける定期検査、積極的治療をするのが難しい場合の症状緩和の相談など、さまざまな目的があります。
また、成人診療に移行することを想定して、自分の病気を自分で説明できるように促すことが重要です。その際に手助けとなるのが「フォローアップ手帳」です。

外来診療を継続していくための支援…幼稚園や学校、学校を終了して社会人としてなど、さまざまな場での社会生活を維持しながら、外来を継続できることが望ましいのですが、治療や副作用によっては外来診療のために活動を制限、調整しなくてはなりません。
通園通学している子どもの場合はある程度の見通しを考えた学校との調整・連絡が必要です。
また社会人となっても、多少の期間の隔たりがあろうと、自分の病気を理解している病院とのつながりは維持、継続していくことが大切です。

生活をしていく中での家族関係

小児がんという病気が家族の中に発生することは、家族にとって衝撃的な出来事です。長期にわたる壮絶な治療は、家族の中の状況やそれぞれの家族の生活にも変化を生じさせます。小児がんの発病によって家族が崩壊したりしないよう、困難な状況を長く引きずらないためにも互いの理解、努力が必要になってくるでしょう。

小児がんを発病すると、治療、検査、入院など経済的な変化が家庭を襲います。また初めて聞く病気の内容や眼の前で苦痛を訴える子どもを見て、親は悲嘆や自責など多くの衝撃を受けるでしょう。このような気持ちは到底一人で受け止めきれるものではなく、誰かに相談することが大切です。家族や、自分が家族と感じている心許すすべての人々であってかまいません。苦しみを分かち合い、想いを共有することが家族関係を強固にしていく第一歩です。

近年医療の場では小児といえども子ども自身の権利から自分の病気を理解し、自分で意思決定することをめざすようになりました。子ども自身に小児がんを説明することを前提に医療が進められることで、子どもはさまざまな疑問に正面から向き合うことができ、長い将来子ども自身が小児がんと向き合えることにつながります。まずは親、家族が小児がんを前向きに受け止め、子供と情報を共有し、闘病している本人が孤立しないように心がけましょう。

小児がんの治療で、親は本人にかwって治療の説明を受けたり、意思決定をして子供の代弁者になります。この役割を負担に感じ、どのように決定するのが子供に良いのか迷うこともあるでしょう。また決定した後に後悔をして、子どもへの罪悪感にとらわれることもあるでしょう。しかしみなさんはいつも子どものことを第一に考え判断しているのですから、決して間違えていないと信じてください。もし不安なときはあらゆる医療職を利用して、また同じ経験をした親の会の人たちに相談するのが良いでしょう。